イェスハイム2025ワールドパラアイスホッケー最終予選
日本が最終予選を突破! 2大会ぶりのパラリンピック出場権獲得
ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会(以下、ミラノ・コルティナ冬季2026大会)の出場権をかけた「イェスハイム2025ワールドパラアイスホッケー最終予選」が11月5日から6日間にわたり、ノルウェーのイェスハイムで行われた。6チームによる総当たり戦を行った結果、日本が通算成績4勝1敗で1位となり、最終予選を突破。平昌2018冬季大会以来、2大会ぶりのパラリンピック出場を決めた。
強敵を破り、2大会ぶりのパラリンピック出場を決めた日本代表
実力拮抗、最終戦を残して4チームが勝敗で並ぶ
ミラノ・コルティナ2026大会の出場枠は「8」。開催国のイタリア以外に世界選手権上位の5チームがすでに出場を決めている。今大会は残りの「2」枠を6チームが争うもので、総当たり戦は各国の意地とプライドのぶつかり合いとなった。
実力が拮抗し、どのチームにもチャンスがある今大会。日本は突破のカギとなる初戦の韓国戦で森崎天夢(FW)が先制点を決めるが逆転を許し、痛恨の黒星スタートとなってしまう。自力出場を決めるには残りの試合はすべて勝利することが最低条件となるなか、日本は第2戦でスロバキアを3-2で下すと、続くカザフスタンとスウェーデンに完封勝利をおさめて4連勝と踏みとどまった。
競技5日目には、日本に敗れたスロバキアがここまで全勝のノルウェーを下したため、最終戦を残してノルウェー、スロバキア、韓国、日本の4チームが3勝1敗で並ぶ展開に。パラリンピック行きの2枚のチケットは、スロバキア対韓国、ノルウェー対日本の直接対決を制したチームが獲得するという構図になった。
スロバキア戦での劇的勝利が突破のカギに
スロバキア戦で先制点を挙げた鵜飼。司令塔としても活躍した
ここまでの試合を振り返ると、日本がこの争奪戦に残るうえでカギとなった試合が、第2戦のスロバキア戦だ。第1ピリオドは両チームともに無得点。膠着状態が続くなか、第2ピリオドの残り3分に日本が鵜飼祥生(FW)のゴールで先制する。しかし、第3ピリオド序盤に粘るスロバキアに2得点され、逆転を許してしまう。
勢いを増すスロバキアと、懸命なディフェンスでしのぐ日本。その重い空気を切り裂いたのが、日本が強化してきた連携プレーだ。まずは第3ピリオドの13分、フェンス際でパックをキープした熊谷昌治(FW)が出したパスに反応した20歳のエース・伊藤樹(FW)が、左手でパックをコントロールして前へと詰め、右のバックハンドでパックをゴールにねじ込んだ。この同点弾を機に、スピードとゴールへの執念を取り戻した日本は猛攻をしかけ、試合時間残り53秒には熊谷が相手GKがはじいたパックを奪って右手で巻き込むようにシュートし、再逆転に成功。その後、日本は残り11秒で反則を取られて数的不利となるが堅い守備でしのいだ。最後まで諦めない、勝利への執念を感じたゲームだった。
スロバキアは6カ国のうち、世界ランキング最上位の格上チームだ。この難敵から挙げた劇的勝利によって、まさに首の皮一枚残った日本。起死回生の同点弾を叩きこんだ伊藤は、「ホッケーの神様が、まだ僕らにホッケーをしていいと言ってくれている」と語り、勝利を噛みしめた。
若手とベテランの融合と連携強化が結実
伊藤(右)は攻守の要としてフル出場し、チームを勝利に導いた
そして、迎えた最終日。日本は命運をかけたノルウェーとの一戦に挑んだ。観客席がノルウェー国旗で埋まり、緊張感が高まるなか先制したのは日本だった。試合開始からわずか38秒、須藤悟(DF)がゴール横から放ったパックが相手GKの手元をすり抜けて得点に。中盤には伊藤がスピードを活かした速攻などで2点を追加すると、鵜飼もゴールを決めて、4-0とリードした。第2ピリオドは互いに1点ずつ奪い、第3ピリオドは鵜飼、熊谷、伊藤がそれぞれ得点。ノルウェーも最後に1点を返すなど反撃に出るが、守護神・堀江航(GK)が好セーブを連発してゴールを死守。日本が優位に試合を進め、8-2で勝利した。
バンクーバー2010冬季大会で銀メダルを獲得後は、世界選手権Bプールへの降格や、ソチ2014冬季大会や北京2022冬季大会の出場を逃すなど、低迷期を経験した日本。その間に10代の選手がチームに加わり、若手とベテランが一体となってチーム再建に取り組んできた。キャプテンの熊谷は、「(長野1998冬季大会出場の)吉川(守)選手、三澤(英司)選手、(ソルトレーク2012冬季大会出場の)須藤選手らベテラン勢が中心になって若手を育て、このチームの存続のために尽力してくれた。そして、伊藤樹や鵜飼祥生、森崎天夢たち10代・20代の選手が世界が注目するプレーヤーへと成長した。本当にこの8年間、諦めないでよかった」と感極まった。また、5試合ほぼフル出場を果たし、大会ベストフォワードに選出された伊藤は、「初戦で敗れた後は終わるかもしれないという空気が流れたけれど、(コーチの宮崎)遼さんが僕を信じて起用し続けてくれた。僕もみんなを信じてよかった。僕らのために用意されたような大会だった」と振り返り、「行くぜ、ミラノ!」と、こぶしを握った。
また、もうひと試合はスロバキアが韓国を下した。ミラノ・コルティナ2026冬季大会には、アメリカ、カナダ、チェコ、中国、ドイツ、開催国のイタリア、そして日本とスロバキアの8チームが出場する。
(MA SPORTS)
