パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2021年5月12日

車いすバスケットボール有明特別強化試合

東京パラ本番会場で男女代表候補の強化試合を実施

車いすバスケットボール男女強化指定選手による「有明特別強化試合」が9日、東京2020パラリンピック本番会場の有明アリーナ(東京・江東区)で開催された。女子代表候補は男子選手を中心に構成する千葉ホークスと対戦。また男子代表候補は10人ずつに分かれて紅白戦を行った。

4月から藤井郁美とともにダブルキャプテンを務める網本がチームをけん引

海外勢を想定した試合で見えた女子代表の課題と収穫

女子日本代表は昨年2月の「国際親善女子車いすバスケットボール大阪大会」以降、対外試合から遠ざかっている。今回の千葉ホークス戦は、高さとスピードに勝る海外勢を想定して戦える貴重な機会であり、積極的にメンバー交代をしながら実戦感覚を確かめた。

試合は序盤からリードを許す展開に。第3クォーターは2ゴール4得点に抑えられるなど、高さのある相手の守備に苦戦し、流れを引き寄せられないまま、45-64で敗れた。岩佐義明ヘッドコーチは、「もっと積極的なプレスが必要だった。合宿ではシュートの確率は上がっているが、試合ではさらにレベルアップしなければいけない」と反省点を述べる。その一方で、「ベンチスタートの選手たちも自分のバスケをしていて、少し先が見えたという手ごたえを感じた」と収穫を口にした。

ほぼフル出場となった網本麻里(カクテル)は、ボールマンにプレッシャーをかけ続けミスを誘うなど我慢強いプレーでチームを引っ張った。網本は、「自分を含めてしっかりチームを作っていきたい。いい時間帯を長く維持し、40分間を全員で戦えるようにしていきたい」と、本番に向けてさらなるスケールアップを誓っていた。

積極的にシュートを狙う藤本

男子代表は若手選手とベテランの相乗効果に期待

男子代表候補は「チームブラック」と「チームホワイト」に分かれて対戦。チームホワイトの2点リードで折り返した第3クォーター、チームブラックはベテランの藤本怜央(宮城MAX)が3ポイントシュートを4本決めるなどして逆転に成功し、最大8点差をつけた。最終クォーターもその勢いをキープして相手の猛攻をしのぎ、54-53でチームホワイトを下した。藤本は試合後、「今は海外のプレーは映像でしか分析できないが、やるべきことは分かっているし、ラストスパートの段階まで来ている。本番でも成長を止めないバスケをしていきたい」と力強く語った。

チームホワイトの22歳の鳥海連志(パラ神奈川SC)は、ゴール下での視野の広さが光っていた。とくに後半は、前半で苦労していたボールコントロールを修正し、パラ神奈川SCのチームメートでもある古澤拓也と息の合った連携で攻撃の起点となりゲームを組み立てるシーンが多く、存在感を示していた。

男子代表の京谷和幸ヘッドコーチは試合を振り返り、「これまでの強化の成果で、パスからシュートへの切り替えなど、選手自身がコート上で判断し、動けていた。オフェンス時の選手の想像力が昨年と比べて格段に上がっている」と評価。また、「若手の成長に引っ張られるようにベテラン勢も走れている。相乗効果を感じるし、チームとしていい方向に向いていると思う」と語り、手ごたえを口にしていた。

選手たちは有明アリーナの雰囲気を確かめながらプレーした

本番会場の経験を活かし、男女とも表彰台を目指す

今回はパラリンピック本番で使用する有明アリーナを使用した。フロアやリングの硬さ、照明の位置や明るさなどを実際に確認する貴重な機会となり、選手らはこの舞台が用意されたことに感謝を述べていた。

東京2020パラリンピックの開幕まで、16日であと「100日」となる。車いすバスケットボールの日本代表は男女ともに開催国枠で出場権を獲得している。男子は12回連続13回目の出場で、初めてのメダル獲得を狙う。女子は3大会ぶりの出場となり、過去最高成績の2000年シドニー大会の銅メダル以上の成績を目指す。

コロナ禍で海外勢との実戦から離れているが、感染対策を講じながら合宿を重ねている男女強化指定選手たち。女子の北田千尋(カクテル)は「もっと守備の強度を上げなければいけないが、どこが相手でも高い精度で戦えるようやっていきたい」と話し、男子の豊島英(宮城MAX)も「残りの合宿で集まれる日数は決まっている。開幕に向けて、しっかり準備していきたい」と語り、気を引き締めていた。

(MA SPORTS)