パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2020年3月10日

第14回全日本テコンドー選手権大会(パラ・キョルギ)

東京パラ男子75㎏級代表の工藤が優勝

「第14回全日本テコンドー選手権大会」のパラ・キョルギの部が7日、駒沢オリンピック公園体育館で開催され、男子-75㎏級・+75㎏級は東京2020パラリンピック日本代表に内定している工藤俊介(ダイテックス)が制した。大会は新型コロナウイルス感染対策として無観客で開催。飛沫防止のため、選手らに試合中のフェイスシールド着用が義務付けられた。

決勝戦で華麗な蹴りの連続攻撃を見せる工藤

工藤は試合後の囲み取材で、「パラリンピックでは、得意のガードからチャンスを作って攻撃していくところを観てもらいたい」と話した

長身を生かした力強い攻撃で主導権を握った工藤

男子-75㎏級は75㎏超級との合同で実施。その決勝で、工藤は-61㎏級から階級変更して臨んだ伊藤力(セールスフォースドットコム)と対戦し、22-13で勝利した。第1ラウンドは4-5と伊藤にリードを許した工藤。だが、第2ラウンド後半に同点に追いつくと、疲れが見え始めた伊藤の動きを捉え、残り1秒で中段回し蹴りを決めた。3点差をつけて迎えた最終ラウンドも、身長180㎝から繰り出す多彩な蹴り技でポイントを重ね、粘る伊藤を突き放した。

実戦で初めてフェイスシールドを着用し、「視界が狭まり、相手と近い距離だと下からの蹴りがまったく見えなかった」と振り返った工藤。それでも、得意のガードを駆使して伊藤の攻撃をさばき、失点を最小限に抑えることができた。コロナ禍の一年は初心に立ち返り、蹴りのスピードやステップを強化してきたという工藤。今大会はその成果を試す絶好の機会と位置付けて臨み、「いい試合ができた。一年前の自分と比べると、基礎的な能力が各段に上がっていると実感している」と、力強く語った。

競技歴2年でつかんだパラリンピックへの切符

23歳の時、職場の事故で左腕を失った工藤。入院中にパラスポーツの存在を知り、退院後にテコンドー道場での体験会に参加するなどしてキャリアがスタートした。稽古の厳しさに衝撃を受けつつ、経験を積み重ね、2019年の世界選手権では世界ランク1位のイラン人選手を破り、銅メダルを獲得。昨年1月の日本代表最終選考会で優勝し、競技を始めて2年でパラリンピックの出場権をつかんだ。パラリンピックでは体格に勝る海外の強敵たちとの激闘が予想されるが、「彼らに負けないパワーを自分もつける。夏に向けてもっと鍛錬を重ねていきたい。目標は金メダル獲得」と言い切り、初代王者になる誓いを新たにした。

「パラの延期は、準備する期間が1年増えたと捉えている」と話す太田。義手を使った上半身の強化などにも取り組む

女子のエントリーは太田のみ「試合ができず残念」

パラテコンドーは国内の競技人口がまだ少なく、競技団体や選手個人が普及活動に励むが、とくに女子の新人選手がなかなか現れない状況だ。今大会は、女子はパラリンピック代表内定の太田渉子(ソフトバンク)が唯一のエントリーだったため、試合をせずに優勝扱いとなった。太田にとって1年ぶりの大会出場で試合感覚を取り戻すチャンスだったが、「試合ができず残念」と、心情を吐露した。

太田は現在、男子選手や健常者を相手に稽古を積み、単調になりがちだった蹴りも連続技が出せるようになるなど、成長を感じているところだという。さらに、義手を装着して上半身の筋力トレーニングに取り組むことで、ガード力も向上しているといい、「昨年よりもコートの中を自由に動けるようになってきた。競技歴が浅い私は試合経験が少ないので、パラリンピック本番までには、なんとか実戦経験を積みたい」と話し、今夏の大舞台に向けて気持ちを切り替えていた。

また、男子-61㎏級は4選手がエントリーしていたが、代表内定の田中光哉(ブリストル・マイヤーズスクイブ)はケガが回復せず棄権。他の2選手も棄権とランダム軽量の失格により、阿渡健太(日揮ホールディングス)が不戦勝で制した。

(MA SPORTS)