パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2019年5月29日

シッティングバレーボールチャレンジマッチ2019

女子の4カ国対抗戦、日本は最下位

「シッティングバレーボールチャレンジマッチ2019」が23日から4日間の日程で、千葉ポートアリーナで開催された。中国(世界ランキング2位)、カナダ(同6位)、イタリア(同11位)、日本(同10位)の女子代表が参戦し、日本は3位決定戦でカナダに1-3で敗れ、4位に終わった。優勝は中国だった。

懸命に腕を伸ばし、ブロックする日本代表。キャプテンの西家(写真中央)は攻守にわたりチームを牽引した

3位決定戦は粘り見せるも逆転ならず

国内で開催する国際大会は16年ぶり。連日、地元の小・中学生や高校生たちが会場に足を運び、大声援を送った。日本の選手たちは「こんな経験は初めて」と喜んだが、予選リーグ序盤はそれが裏目に出た。

雰囲気にのまれて硬くなり、開幕戦はカナダにストレート負け。第2戦は、強豪・中国に挑むも、強烈なスパイクに翻弄され、完敗した。続くイタリア戦はようやく冷静さを取り戻し、一時リードする場面を作ったが、粘り切れずに0-3で敗れた。

3位決定戦はカナダと再戦。初戦では相手の移動攻撃に対処できなかったことから、マンツーマンブロックを意識して試合に臨んだ。だが、開始早々に10連続失点と大ブレーキ。第2セットも落として追い込まれた。だが、第3セットはこの日好調の菊地智子のサービスエースとブロックなどが勝負所で決まり、1セットを取り返した。第4セットも集中力をキープし、中盤まで一進一退の攻防が続く。だが、その後はカナダの粘りにミスを誘われ、連続得点を許して突き放された。

タイムアウトで選手に声をかける真野監督

世界で勝つため日本が取り組む身体づくり

東京2020パラリンピックに向け、現在の実力を図る絶好の機会となった今大会。強化の途中にある日本は、勝利を挙げることができなかったが、日本が取り組むべき課題が明確になった。「一人ひとりの技術向上、そしてまずはフィジカルを強化する」と真野嘉久監督。

座って行うシッティングバレーボールにおいては、安定した骨盤と柔軟な肩甲骨が必要とされ、日本代表は3年前から計画的に取り組み、1年半前からは専属トレーナーの指導を受けている。骨盤でしっかりと身体を支え、さらに肩甲骨の可動域が広がれば、ブロックで腕を伸ばした際にさらに3㎝の高さが出るといい、「その見本が中国。我々も目指したい」と真野監督は話す。

また連携を重視し、合宿では選手がどのポジションでもプレーできるよう練習を重ねてきたという。今大会も1試合目でサービスエースも決めた竹井幸智恵が2試合目から本職のリベロで、1試合目のリベロだった赤倉幸恵は2試合目からセッターでそれぞれ出場したが、冷静に対応していた。格上チーム相手にこうしたさまざまなフォーメーションを試した結果、3位決定戦では混戦から1セットを奪うことに成功。キャプテンの西家道代は「全員がひとつになれたことが大きい。次につながる」と語り、東京2020パラリンピックに向け、収穫を感じている様子だった。

ラファエラ・バッターリァ(イタリア)は左手首欠損の障がいを感じさせないパワフルなプレーが印象的だった

強豪国が示した競技の魅力

今大会、キレのある動きで圧倒的な強さを見せたのが、中国だ。パラリンピックで女子が正式種目になったアテネ大会から3連覇を果たし、リオ大会では銀メダルを獲得している強豪で、緻密な攻撃システムを体現できる強いフィジカルと展開の読みの鋭さは、出場国なかで群を抜いていた。日本はパラリンピックでこの中国に勝つことと、メダルを獲得することを目標に掲げており、残り1年間でどこまで差を詰められるか、注目したい。

また、昨年の世界選手権で4位に入っているイタリア代表は、上肢障がいの選手を多く擁するチーム。シッティングバレーボールは足だけでなく手も使ってコート上を移動することからハンディになるとも考えられるが、アマウリ・リベイロ監督は「確かに難しいところがあるが、選手それぞれが限界に挑戦して、ここまで結果を残せるようになった」と話す。今大会もチームメートが互いにカバーする連携プレーと、巧みなボールコントロールで決勝まで勝ち上がっており、シッティングバレーボールという競技の可能性や新たな楽しみ方があることを私たちに教えてくれた。

(MA SPORTS)