パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2019年2月20日

全日本テコンドー選手権大会(パラ・キョルギ)

伊藤、工藤、太田がパラテコンドー日本一!

全日本テコンドー選手権大会のパラ・キョルギ(組手)の部が16日、千葉ポートアリーナで行われ、男子-61㎏級は伊藤力(セールスフォースドットコム)、男子+61㎏級は工藤俊介(ダイテックス)、女子は太田渉子(ソフトバンク)がそれぞれ優勝した。

多彩な足技を繰り出し、存在感を放った男子-61㎏級の伊藤

蹴り技とメンタル磨き、まい進する伊藤

男子-61㎏級は、伊藤が圧倒的な強さを見せ、連覇を達成した。初戦となる2回戦では、田中俊佑(憲守会)と対戦し、20-2で勝利。続く決勝では、初戦をポイントギャップによる勝利で勝ち上がった重水浩次(クマモトテコンドーアカデミー)を30-11で下した。

女子を制した太田は、世界選手権+58㎏級(K44)で銅メダルを獲得するなど好調だ

伊藤は国内におけるパラテコンドー界の第一人者で、現在の世界ランキング(-61kg、K44)は10位。上位へのランクアップを目指して、所属クラブでの稽古のほかに、道場や大学への出稽古で汗を流す。得意のティッチャギ(後ろ蹴り)に磨きをかけて臨んだ、2月上旬の世界選手権では、「好調がゆえに、相手の出方を見てしまい」、結果は残せなかった。その反省から、この日の試合では積極的に相手との間合いを詰め、離れ際に蹴りを決めるなど攻め続けた。

目標に据える東京2020パラリンピックに向け、今年はさらに4~5大会にエントリーし、自分を追い込むつもりだ。「気持ちが崩れると、蹴りのコントロールも乱れる。試合で何があっても自分をリセットできるようにしたい」と、メンタル面の強化も誓っていた。

工藤が圧巻勝利! 東京パラへ弾み

男子+61㎏級は3名がエントリーし、第1シードの工藤は初戦が決勝となった。その決勝で石原和樹(洪人館)と対戦し、試合開始直後から一気に攻め、圧倒。第1ラウンドで18-0と大差がついたところで相手セコンドからタオルが投入され、勝利を手にした。

競技歴1年半ながら、めきめきと頭角を現している工藤。世界選手権の-75㎏級(K44)では、銅メダルを獲得した。カギとなったのが、世界ランク1位のイラン人選手を破る金星を挙げた試合。「ゾーンに入ったというか、身体が反応した感じだった。ラウンドを重ねるごとに、気持ちが上向きになっていって、テコンドーを楽しめたことが勝因だと思う」と話し、今後の競技人生において重要な一戦になったと振り返る。

駆けつけた大勢の報道陣の質問に答える工藤

一方で、準決勝で敗れて手にした銅メダルに「悔しい思いをした」とも語る。「一日一日を大切にして、東京パラでは金メダルを獲りたい」と工藤。経験を力に、さらなる上を目指していく。

また、3名がエントリーした女子は、元障がい者スキー選手で引退後に競技転向した太田渉子(ソフトバンク)が杉本江美(リンクステコンドーアカデミー)を決勝で下し、2連覇を果たした。太田は当初、パラテコンドーの普及活動に力を入れていたが、昨年の全日本に出場したことを機に本格的に競技者の道を歩むことを決めた。「いろんな人のテコンドースタイルを学んでいるところ。数多く、試合形式の練習を積んでいけたら」と話し、前を向いた。

初採用の東京パラリンピック出場への道

パラテコンドーは上肢に切断や機能障がいがある選手が対象で、障がいの程度によりK41~K44の4クラスに分けられ、男女とも体重別階級(それぞれ3階級)で行われる。パラリンピックでは東京大会で初めて実施される。

世界テコンドー連盟の出場基準によると、東京パラリンピックではK43とK44が統合された1クラスで実施される。出場数は各階級とも12名。まずは世界ランキング上位者により6名が決まり、さらに大陸別予選会やワイルドカードで確定する。世界ランキングのランキングポイントは2019年末までの分が反映されるため、今年はひとつでも多くの大会で勝利していくことが求められる。

国内においては、たとえば男子-61㎏級の場合は、K44の伊藤と、今大会は出場していないが昨年のアジア選手権で銀メダルを獲得したK43の阿渡健太(日揮)が同クラスとなる。全日本テコンドー協会パラテコンドー委員会の高木伸幸委員長は、「互いに切磋琢磨して力を伸ばしてほしい」と話し、国内での競争意識の高まりに期待をかける。伊藤もまた、「合宿では良いところ、悪いところを言い合う仲。互いのことを分かっているので、試合ではそれを凌駕できるようにしていきたい」と力強く語っており、世界に目を向けていた。

(MA SPORTS)