パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2018年6月13日

三菱電機WORLD CHALLENGE CUP 2018

日本男子が世界の強豪3カ国を破り、初優勝!

6月8日から3日間、車いすバスケットボールの国際大会「三菱電機WORLD CHALLENGE CUP 2018」が、武蔵野の森総合スポーツプラザで行われた。男子日本代表はオーストラリア、カナダ、ドイツと強化試合を行い、予選から決勝まで4戦全勝で初優勝を果たした。

急激に変化を遂げる日本代表を攻守で牽引する藤本怜央

東京パラに向けた日本代表の強化が狙い

2020年東京パラリンピックに向けて日本代表の強化のため、昨年始まった今大会。2回目の今年は日本代表のほか、昨年の優勝国で2014年世界選手権覇者のオーストラリア、今年の世界選手権開催国でリオパラリンピック8位のドイツ、“世界最高の選手”と呼ばれるパトリック・アンダーソンが現役復帰したロンドンパラリンピック金メダルのカナダが出場した。

4カ国総当たりの予選で、日本は初戦でドイツに65-60、続いてオーストラリアに52-44、カナダに64-53で勝利。全勝で決勝に駒を進めると、再びオーストラリアと対戦し、堅いディフェンスと勝負どころでの連携プレーが機能し、65-56で競り勝った。

鳥海連志の活躍は、海外勢に日本若手選手の台頭を印象づけた

強豪と渡り合った日本のトランジションバスケ

「世界に通用する日本独自のバスケットボールのデザインをやっと描けた。選手が本当に頑張ってくれた」

及川晋平ヘッドコーチ(HC)がそう話すように、素早く攻守の切り替えする「トランジションバスケ」が、日本の武器となった。常に相手にプレッシャーをかける激しいディフェンスで、身体のサイズと高さの違いによって得点差が生まれやすいスリーポイントライン内の攻防を制し、一気にディフェンスからオフェンスへと展開して得点を決める。

この形はもともと日本が得意とするスタイルだが、昨年のこの大会では強豪相手に40分間を走り切れずスタミナ不足が露呈した。そこで、フィジカルの専門コーチを招集し、土台づくりとともに、代表の強化合宿では早朝からの3部練習、ときに4部練習に挑み、準備をしてきた。U23世代の若手選手も期待に応え、19歳の鳥海連志(パラ神奈川スポーツクラブ)や22歳の古澤拓也(同)らが、体力的に厳しくなる第4クォーターに連続得点やスリーポイントシュートを決めてチームを引っ張る姿は、実に頼もしく感じた。

これまでは得点力のある香西宏昭(ドイツ・ランディル/NO EXCUSE)と藤本怜央(宮城MAX)のWエースにボールが集中することが多かったが、今のチームは12人全員がクリエイティブなプレーをし、それぞれの役割を果たすことができる。決勝の終盤で相手のシュートの精度が落ちたのも、そうした早い段階からの駆け引きがじわじわと効いてきた証拠といえる。オーストラリアのエース、トム・オーネイルソーンは「日本チームはここ5年で一番良い。我々にとって強敵になる」と警戒する。

今大会は8月に開催される世界選手権の試金石となった。及川HCは「結果が出てほっとしている」としつつも、「世界選手権は王者たちが本気になる大会。日本はようやくその戦国時代に一歩足を踏み入れた感じ」と気を引き締める。また、レイアップシュートを落とすなど課題を指摘し、「完成度はまだまだ。本当の実力はこの世界選手権で試されるので、それまでにワンステップ発展させたい」と言葉に力を込め、前を向いた。

観客の応援を背に、ベンチで指示を出す及川HC

パラリンピックムーブメントの拡大に期待

会場の武蔵野の森総合スポーツプラザは、2017年秋に誕生した。メインアリーナは最大10,000人以上を収容でき、2020年東京パラリンピックでは車いすバスケットボール会場のひとつとなる予定だ。

そのため、今回は“大会運営のリハーサル”としても注目された。日本代表の強化のほかに、審判員やテーブルオフィシャル、競技ボランティアなどの競技スタッフ育成も目的としており、海外から国際審判も招いた。また、観客が「観戦チケットを購入して、パラスポーツを観る」意識を持つ契機にしてもらおうと、2日目と3日目はコートサイドに設けたアリーナ席を有料で販売。無料のスタンド席を含め、3日間でのべ12,492人が観戦に訪れた。

会場が一体となるような、これまでにない大きな声援に、日本の選手たちは「このホーム感、応援が最後まで力となってプレーできた」と、感謝の言葉を口にしていた。また、会場については、ドイツのキャプテン、ヤン・ハラーが「良いアリーナ。スタッフも組織運営も素晴らしかった。パラリンピックで戻ってきたいと思った」とコメントしている。

昨年の3位から内容も順位も大きく躍進した日本。ライバル国としのぎを削り、またホームの利を生かし、来年はさらにスケールアップした姿を見せてくれることを期待したい。

(MA SPORTS)