パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2018年2月20日

第4回全国障がい者スノーボード選手権大会サポーターズカップ

国内唯一の全国大会で小栗、成田が優勝!

パラスノーボード国内唯一の大会である「第4回全国障がい者スノーボード選手権大会サポーターズカップ」が2月17日から2日間にわたって、長野県の白馬乗鞍温泉スキー場里見ゲレンデで開催された。健常者と上肢や下肢に障がいがある選手が同じコースを滑り、それぞれのクラスで頂点を競った。

果敢な滑走を見せる小栗大地。平昌パラリンピックでは「自分の滑りをして楽しみたい」と語る。

実施はスノーボードクロス1種目

実施種目は、連続したバンクやローラーなどで構成されたコースを滑り順位を競うスノーボードクロス。レースは予選で一人2本ずつ滑ってタイムを計測。決勝は2名の選手が同時にスタートし、時折強く吹き付ける風雪に苦戦しながらもゴールを目指した。

3月の平昌パラリンピック日本代表の男子「下肢障害その他」の部の成田緑夢(近畿医療専門学校)、「上腿義足」の部の小栗大地(三進化学工業)はそれぞれのクラスで優勝し、存在感を見せた。また、リオパラリンピックの陸上・走幅跳銀メダリストで、“夏冬パラリンピックに出場”を叶えた山本篤(新日本住設)は、体調不良のため欠場した。

下腿義足の市川貴仁(手前)はダイナミックな滑りで優勝。

男子「下腿義足」の部を制した市川貴仁(みつまたスノーボードスクール)は美しいフォームと攻撃的な滑りで会場を沸かせた。自動車の交通事故で左ひざ下を切断し、パラスノーボードを始めて4年。今季はワールドカップ(W杯)3大会に出場したが、フィンランド大会のスノーボードクロスの10位が最高。平昌パラ代表には届かなかったが、早くも照準を4年後の北京に定め、「基礎からやり直し、板に対してスピードを乗せていく技術を磨いていきたい」と力強く話した。

また、日本スノーボーダー界のトップライダーで、2015年に撮影中の事故で脊椎を損傷し下半身麻痺となるも雪上に復帰した岡本圭司(HYWOD)も「下肢障害その他」の部に出場した。

代表組は工夫を凝らした滑りで今季好調維持

義足のスノーボーダー・小栗は、パラリンピックでの上位進出が期待される。昨年9月のW杯ニュージーランド大会ではミスの少ない滑りを披露し、旗門を設置したコースを3度滑りベストタイムを競うバンクドスラロームで2位に入った。小栗は小学5年でスノーボードに出会い、25歳でプロ選手になったアスリート。13年に仕事中の事故で右脚を太ももで切断したが、パラスノーボード選手に転向し、専用の義足を着用して滑る。

今季から新しい義足を使用する。軽量化し、ひざの曲げはじめがスムーズになったことで、フロントサイドのエッジングが改善され、ターンを曲がりやすくなったという。二星謙一ヘッドコーチも小栗のターン技術の高さを「強み」と評価し、「パラリンピックのコース情報はまだ少ないが、セクションのバーン状態が良ければ、彼の技術はアドバンテージになる」とみる。

小栗は平昌に向けて「プロ選手だったときに叶わなかった日本代表になり世界に挑戦できることは嬉しいこと。義足スノーボードの世界レベルは高いけれど、出るからにはてっぺんを目指したい」と語り、前を見据える。

大会後、報道陣に用具の説明をする成田緑夢。

成田も平昌で表彰台に立てる位置にいる。スノーボードクロスとバンクドスラロームともに、世界ランキング1位だ(2018年2月19日付)。スノーボードは1歳から始め、トランポリンやフリースタイルスキーでも頭角を現すが、19歳だった13年4月、トランポリンの練習中の事故で左脚の腓骨神経まひの重傷を負った。15年のパラアスリート発掘事業に参加してパラ陸上を始め、その後、本格的にパラスノーボードをスタート。初出場の16年W杯で4位に入り、世界を意識した。それからは試行錯誤して自分の滑りを模索してきた。

足首を使って板を操作し踵に加重するバックサイドの滑走は、左足首にまひが残る成田の課題のひとつだという。だが、昨年11月のW杯フィンランド大会から、左脚にスノーボード用ではなく、アルペン用の硬いスキーブーツを履くようになってから、スピードと安定感が増し、「手ごたえを感じている」。2月のW杯カナダ大会でも左脚のバインディングのアングルを微調整し、2種目優勝につなげた。

平昌パラリンピックでは、「世界のトップと争える選手でいたい。見ている人が、ドキドキしたと言ってもらえるレースをしたい」と抱負を語る。

北京パラ見据え、選手発掘・育成が課題

今大会の参加者は健常者含め、23名。女子の「上肢障害」の部のエントリーはゼロだった。「まだ競技の認知度は低い。選手の発掘と育成に力を入れ、北京パラリンピックまでに全カテゴリーをそろえたい」と関係者は語る。

なお、パラスノーボードは平昌パラリンピックで新競技として実施される。前回ソチ大会では、アルペン競技の一種目としてスノーボードクロスが採用されたが日本人勢の出場はなく、平昌大会で初めて選手を派遣する。

(MA SPORTS)