パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

<<一覧に戻る

2017年11月16日

第19回日本ボッチャ選手権大会本大会

若手選手が躍進、混戦のBC3は18歳・河本が激闘制し初優勝!

「第19回日本ボッチャ選手権大会本大会」が11月11日から2日間にわたって、大阪市の府民共済SUPERアリーナで開催された。各クラスともボッチャ日本一を決めるにふさわしい白熱した試合が展開され、また10代や20代前半の若手選手の活躍が光る大会になった。

BC3決勝でタイブレークの接戦を制し、初優勝を飾った河本圭亮(右)

注目のBC2は杉村がタイトル奪還!

選手数が多いBC3は、今年も大混戦となった。電動車椅子サッカーでも活躍する有田正行(サウスフィールドクルー)は、準々決勝で昨年準優勝の田中恵子(石川県ボッチャ協会)に勝利。決勝は、その有田を準決勝で破った18歳の河本圭亮(あいちボッチャ協会)と、準々決勝でリオパラリンピック代表の高橋和樹(埼玉ボッチャクラブ)を下した江川拓馬(滋賀県ボッチャ協会)のカードに。互いに一歩も譲らない攻防が続き、2-2からのタイブレークの末、河本が江川に競り勝った。「家族やヘルパーさんなど、支えてくれた人たちへの感謝の気持ちでいっぱい。東京パラリンピックに出てメダルを獲ることが目標。もっとレベルを上げたい」と話し、笑顔を見せた。

BC2を制した杉村(左)。最後は廣瀬と激戦を称えあった

BC2は佐藤駿(Boccia Club Noble Wings)、吉見成生(サウスフィールドクルー)が予選リーグ同組で昨年3位の梅村祐紀(あいちボッチャ協会)を破って決勝トーナメントに進出、さらには準決勝に駒を進めた。それぞれ決勝の舞台には立てなかったが、ともに伸び盛りの20代前半。今後の活躍に注目が集まりそうだ。

決勝では、日本を代表する2大エース、廣瀬隆喜(Boccia Club Noble Wings)と杉村英孝(静岡ボッチャ協会)が激突。杉村は1点ビハインドで迎えた第4エンドで同点に追いつきタイブレークに持ち込むと、緊張感漂うなかでも冷静に戦術を組み立て、廣瀬に得意技のロビングボールをあえて打たせてミスを誘う頭脳プレーで勝利した。廣瀬から王座を奪還し、2年ぶり4度目の頂点に立った杉村は、「リベンジできて素直に嬉しい。互いに切磋琢磨して、これからも日本一をかけて勝負していきたい」と力強く語った。

上投げで精度の高い投球を見せたBC1準優勝の中村

BC4は16歳・江崎、BC1は19歳・中村が準優勝

BC4は16歳の江崎駿(Brex)、14歳の渡邊湧太(静岡ボッチャ協会)が決勝トーナメントに進出と、若い力が大躍進。江崎は決勝で古満渉(龍 HIROSHIMA)に敗れたが、日本ボッチャ協会の村上光輝強化指導部長も「戦略的な成長がみえる」とさらなる飛躍に期待を寄せる。タイ、イギリスと対戦する翌週のジャパンパラ競技大会の日本代表に選出されており、世界を相手にどのような戦いを見せるか楽しみだ。

BC2からのクラス変更でBC1にエントリーしたのは、蛯沢文子(URAYASU.B.C)。大会4連覇中でリオ代表の藤井友里子(富山ボッチャクラブ)を予選リーグで破り、さらには準決勝で同じくリオ代表の木谷隆行(太陽の家SUN Chips)にも勝利した蛯沢は、決勝で中村拓海(長居ボッチャクラブ)を5-1で下して優勝した。

敗れた中村は19歳ながら過去3度、2位になっている実力者。「今年こそは頂点に」という思いで練習量を増やして大会に臨んだ。今大会は目標に届かなかったが、今年はワールドオープンバンコク大会に日本代表として出場し、チーム戦(BC1/BC2)で金メダルを獲得するなど、飛躍の一年になった。リオパラリンピックの代表から漏れた悔しさが原動力になっているといい、「この経験を次につなげたい」と話し、前を向いた。

OP座位は大濱梨沙(URAYASU.B.C)が第13回大会以来の優勝を果たし、またOP立位は皆森俊夫(サウスフィールドクルー)が3連覇を達成した。

2020年以降を見据え、競技普及と強化に注力

ボッチャはパラスポーツオリジナルの競技だが、リオパラリンピックで日本代表がチーム戦で銀メダルを獲得したことで、一般の認知度が上がりつつある。また、日本ボッチャ協会が普及活動に積極的に取り組み、スポーツイベントでの体験会や、肢体不自由特別支援学校日本一を決める「ボッチャ甲子園」を開くなどして、競技人口も増加中だ。全国にクラブチームが発足し、日本選手権においては、これまで一か所で行っていた予選会を今年度から東西ブロックに分けて実施している。それぞれの予選会には100人近くの選手が参加しており、競技力アップにもつながっている。

また、選手だけでなく、競技アシスタントや指導員、審判の普及とレベルアップのためのサポート体制にも力を入れていくという。村上強化指導部長は「2020年以降の発展を見据えて、さまざまな課題に取り組んでいる。一人でも多くの人に、ボッチャのことを知ってもらえれば」と話している。

(MA SPORTS)