パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

<<一覧に戻る

2017年6月14日

IPC公認 第28回日本パラ陸上競技選手権大会

19歳・佐々木真菜が2種目でアジア新、“東京世代”が飛躍!

パラ陸上競技の国内最高峰の大会である「IPC公認 第28回日本パラ陸上競技選手権大会」が6月10日から2日間にわたって、東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場で開催された。3年後の東京パラリンピック代表を狙う若い世代が活躍。成長を遂げる選手に注目した。

女子400m(T13)を制した佐々木真菜(右)。同走したリオ銅メダリストで、T47クラスの辻沙絵(左)にも競り勝った

競技人口増加、混戦のT54は切磋琢磨に期待

今大会は、過去最多となる約250名がエントリーした。とくにジュニア世代の出場が増えたことが特徴のひとつで、その背景について、日本パラ陸上競技連盟の三井利仁理事長は、「2020年東京パラリンピックに向けた各地での選手発掘事業や、リオパラリンピック後に本格的に始動したパラ陸連の育成部の取り組みの成果といえる」と説明する。

冬場の走り込みで後半の伸びに自信をつける西勇輝

とくに注目されたのが、車いすの男子T54クラス。これまで100mや200mといった短距離はエントリーが8名以下のためいきなり決勝が行われることが多かったが、今年はそこに山北泰士、木村勇聖(いずれも、ソシオSOEJIMA)ら10代の強化育成指定選手が加わり、それぞれ予選2組で構成された。18歳の木村は100m、200m、800mで予選を勝ち上がって決勝に進出。高いポテンシャルを見せた。

そのなかで存在感を示したのが、彼らより少し上の世代となる、23歳の西勇輝(野村不動産パートナーズ)と25歳の生馬知季(WORLD-AC)。初日の200m決勝は両者がほぼ並んでゴール。写真判定の結果、0.05秒差で西が優勝した。一方、翌日の100m決勝では得意のスタートダッシュを決めた生馬が先頭でフィニッシュし、きっちりリベンジを果たした。「100mでは誰にも負けたくない」と生馬が言えば、西も「短距離界を引っ張る存在になっていきたい」。ともに7月の世界選手権(イギリス)の代表に初選出されており、切磋琢磨で世界の頂点を目指す。

健常者と練習で「さらなる上を目指す」

好調を維持しているのが、視覚障がい(T13/弱視)の19歳・佐々木真菜(東邦銀行)。所属企業の陸上部で、健常者と練習に取り組む。「自分のタイムが上がっても先輩方のレベルには達しない。そこからさらに上を目指せる素晴らしい環境」に身を置き、フォームと腕ふりを強化。初日の200mをアジア新で制すと、メイン種目の400mもアジア記録を更新する1分0秒19で優勝。だが、本人は「悔しかった。コンディションが良く、59秒台だと思っていたので」とコメント。世界選手権でもその“1秒の壁”越えを目標に据え、メダル獲得を狙う。

左手に義手をはめて走る鈴木雄大(T47)は、高校まではサッカー一筋。卒業後は就職予定だったが、昨年の選手発掘事業でリオ銀メダリストの山本篤(スズキ浜松AC)らに見出され、パラ陸上への挑戦を決意。一転して日体大に進学し、今年4月から陸上部で一般の選手とともに練習に励む。メインの100mは目標タイムに届かなかったが、「またスポーツができてうれしい。仲間から刺激を受けるし、自分の走りも定まってきた。さらに改善していきたい」と充実した表情を見せていた。

新保大和は自身が持つ日本記録を大幅に更新!

投擲種目でも若い力が爆発

男子F37(片麻痺など)の円盤投は、高校2年の新保大和(兵庫県立武庫荘総合高)が昨年7月の関東パラで自身が樹立した日本記録を7m近く上回る44m46で制した。新保は生まれつきの脳梗塞による脳性麻痺で左半身に動きづらさが残るものの、中学から陸上部で投擲種目を始め、高校でも円盤投と砲丸投に取り組み、インターハイ出場を目指している。普段は高校男子の1.75㎏の円盤を使用しており、パラ陸上の1㎏での投擲は「ほぼ、ぶっつけ本番」となるが、鍛え上げた背筋と下半身で飛距離を伸ばした。「パラのほうでは50mは出したい。2020年東京パラリンピックの出場も目標にしています」。高いポテンシャルを秘めた16歳の今後に、注目が集まりそうだ。

また、右手関節部欠損の山崎晃裕(東京国際大)は男子F46のやり投の6投目で51m56をマークし優勝した。世界選手権代表に初選出されており、「自己ベストを更新してメダル争いに食い込みたい」と話し、さらなる活躍を誓っていた。

なお、強化育成指定選手12名が出場を予定する世界ジュニア選手権は、8月3日から6日までスイスのノットビルで行われる。

(MA SPORTS)