パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2015年7月22日

第26回 IPC公認 日本パラ陸上競技選手権大会

2日間で9のアジア記録と39の日本記録が誕生

大阪市のヤンマースタジアム長居(長居陸上競技場)で「IPC公認 日本パラ陸上競技選手権大会」が7月18日と19日の2日間にわたって開催された。10月22日にカタール・ドーハで開幕する世界選手権の最終選考を兼ねた大会。また、来年に迫ったリオパラリンピックを見据え、ユース世代からベテランまで多くの選手が出場した。

走幅跳でアジア記録を塗り替えた山本は200mでも会心の走り!

鉄人・山本篤が2種目でアジア新!
芦田は3種目で日本新記録をマーク

男子走幅跳で世界ランキング2位の義足アスリート・山本篤(T42・大腿切断/スズキ浜松AC)が躍動した。3種目にエントリーし、200m(26秒00)と走幅跳(6m36)でアジア新記録を樹立した。走幅跳では今年から義足を新しくし、板バネ部分を長くした。今大会は新旧2タイプの義足で挑んだ。記録が出たのは旧タイプで跳んだ5回目で、新型は今後軽量化を含めて改良を加えていくという。今月26日からは、IPC陸上グランプリファイナルに出場予定だ。ここでも、200mと走幅跳で記録更新を狙い、世界選手権、さらにはリオパラリンピックのメダル獲得に向けて弾みをつけたいところだ。

跳躍競技で急成長を遂げているのが芦田創(T47・右上肢機能障害/早稲田大)だ。初日に走幅跳と4×100mリレーで日本新記録を出した芦田は、2日目に得意の三段跳でも自身が持つ日本記録を44cm更新する13m79をマーク。世界選手権の参加標準記録を突破した。高校1年から陸上を始めた芦田。大学では陸上同好会で主に400mを走っていたが、大学3年の時に「世界で勝負するため」種目変更に踏み切った。4年生となった今春からは伝統ある競走部に所属し、全国から集まる国内トップクラスの健常の選手とともに練習に励む。「練習に取り組む彼らの意識の高さに刺激を受ける。僕もパラ陸上を背負っていきたいという気持ちが芽生えた」と語り、世界の舞台を見据える。

トラック中長距離で圧倒的な強さをみせた樋口

トラック競技では、世界的にも選手層が厚く、激戦区とされるT54(切断や機能障害などの車いす)に注目が集まった。100m、200m、400mの短距離は52歳のベテラン・永尾嘉章(ANAORI A.C)が、また800m、1500m、5000mは樋口政幸(バリストライド)が力強い走りで優勝した。そして、中長距離で樋口の背中を追う大学生レーサーの鈴木朋樹(関東身障陸連)が、800mと1500mで3着に。「(800m決勝では)樋口選手についていこうと挑んだんですが、ラスト1周で離されてしまった。体力的にも身体の使い方もまだまだです」と反省を口にする。今年の東京マラソンでは初マラソンながら2位に入った若手成長株だけに、今後の活躍が楽しみだ。

視覚障がいクラスでは、200mで山路竣哉(T12/AC・KITA)が23秒28の日本記録で優勝。「このタイムでは世界に通用しないが、苦手な後半を意識して走れたのが良かった」と手ごたえを感じた様子。また、4月のロンドンマラソン兼2015IPCマラソン世界選手権で3位に入った堀越信司(T12/NTT西日本)は1500mで納得の走り。ゴール直後にアジア記録更新を確認すると、トラックに倒れこんで喜びを表現した。

昨年手術した右肩は「7.5割ほどまで回復」と加藤。今後の活躍に期待がかかる

女子投てき3種目制覇の加藤は
「楽しみながら試合ができた」

女子F46クラス(切断など)で、今月砲丸投げの世界新記録(12m47)を樹立したばかりの加藤由希子(仙台大学)は、今大会での記録更新は叶わなかったものの投てき3種目(砲丸投げ、円盤投げ、やり投げ)を制した。砲丸投げをメインとするが、加藤のクラスは世界選手権やパラリンピックで非採用とあって、リオパラリンピックはやり投げで挑戦するつもりだ。試合後のインタビューでは、「砲丸投げで勝負したいと思っていたので葛藤はあるが、リオではやり投げで自分ができるパフォーマンスを精いっぱいやっていきたい」と話し、最後にトレードマークの笑顔を見せた。

女子T47 (片前腕切断など)100mの決勝は、高校3年生の三須穂乃香(新潟県立村上高)が13秒11で優勝した。このレースで2位に入った辻沙絵(日本体育大)が2週間前の関東身体障害者陸上選手権で出した日本記録を0.11秒上回る好タイム。飛躍の可能性を大いに秘めた10代スプリンターの今後に期待が高まる。

100mと200mではT44(下腿切断など)の高桑早生(エイベックス・グループ・ホールディングス)が、ともに大会新記録で2冠。走幅跳では、その100mで2位だった中西麻耶(大分県身障陸協)が、6回目の跳躍で5m24を記録して優勝した。「同じクラスの中西選手の存在は励みになっている」と高桑。これからも互いに刺激し合いながら、世界の頂点をめざしていく。

(MA SPORTS)