パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2016年1月26日

豊田まみ子選手(パラバドミントン)

「バドミントンは“自分”にどれだけ勝てるかが勝利のポイント。
心身を磨いて、東京パラリンピックで最高のパフォーマンスを発揮したい」

2020年の東京パラリンピックから正式競技となるパラバドミントン。小学4年でバドミントンを始めて以来、シャトルを追い続ける豊田まみ子選手は、4年後に迫った夢の大舞台に向けてスタートを切った。強化に向けた取り組み、そしてパラリンピックへの思いを聞いた。

パラリンピック正式競技の採用はパラバドミントン関係者の長年の悲願でした。決まった時は、どんな気分でしたか?

嬉しかったですね。でも、東京で採用されると信じて思ってずっと練習してきたので、驚きはしなかったです。決まったことで、もっと頑張っていきたいと、改めて確固たる目標ができました。



パラバドミントンの競技規則はほぼ一般のバドミントンと共通です。その中で、パラバドミントンならではの魅力はどんなところでしょう?

大きく分けて、車いすと立位のカテゴリーがあり、さらに障がいの度合いに応じたクラス分けがされています。車いすでプレーする選手は半面のコートを使用しますが粘り強いプレーと駆け引きが特徴で、立位は速いステップ、下肢障がいは長いラリーと、それぞれのクラスに魅力があります。私は上肢障がいのSU5で、このクラスの男子は一般の選手に勝るとも劣らない迫力あるプレーが見どころですし、女子だとラリーをつなぐ選手が多いですね。それぞれのクラスの特徴を知ったうえで競技を見てもらえれば、より観戦が楽しくなると思います。



「インチョン2014アジアパラ競技大会」でシャトルを追う豊田。2020年東京パラリンピック出場が最大の目標だ

2015年は出場した3つの国際大会でメダルを獲得されました。この結果はどう受け止めていますか?

嬉しさよりも、悔しさや課題が残りました。パラバドミントンはアジアで盛んですが、強いとされる中国はあまり国際大会に出場しないんです。でも、5月の中国国際は地元開催ということもあって中国の10代の選手も多く参加しており、層の厚さを実感しました。私が同じクラスの中国選手とシングルスで対戦したのはこの大会が初めてで、1ゲーム先取したのに逆転負けを喫してしまい……。とにかく相手の選手はメンタルが崩れないし、気迫もすごかった。どこかで油断していたのかもしれません。



東京を見据えると、これからはより経験を重ね、メンタルを強化することがカギになるでしょうか。

はい。バドミントンは相手がいるスポーツですが、とくにシングルスはコートに入れば一人であることから、孤独に打ち勝つ強さが必要だと言われます。結局は自分との闘いなので、自分にどれだけ勝てるかが勝利のポイントになってきます。昨年9月の世界選手権の決勝も、入場の際に派手な演出がなされていて、緊張から実力が発揮できず、本当に悔しい思いをしました。もっと一般の試合にもエントリーして、似たような経験をたくさんして学んでいきたいと強く思いました。ただ、負けたことで自分の内面を客観的に見られるようになってきたので、これを成長の糧にしたいですね。



世界のパラバドミントンの傾向は?

一般のバドミントンが強い中国や東南アジアのチームは、ナショナルチームとして一緒に生活して練習するプロのような扱いをされていると聞いています。パラリンピックの正式競技に決まるということは、本当にすごいことなんだなと思いました。日本は今のところ、多くの選手が働きながら所属のクラブチームで練習し、一般の大会に出るなどして個人で強化を図っています。環境を変えることも必要だと思いますが、今ある環境の中でどう工夫するかが大事になってくるのではないでしょうか。



バドミントンの実業団チームを持つ企業に所属し、一緒に練習もされています。どんな点で成長を感じますか?

実力的にはまだまだ足りないことばかりなのですが……。実業団の選手は自分がうまくなるために必要なことをすべて自分で考え、プランを立て、行動しています。コーチや監督のアドバイス以上のことに取り組む、“プラスアルファ”の練習が強くなる秘訣だと感じたので、そのストイックな姿勢を真似するところから始めました。最初は自信がありませんでしたが、諸先輩方から刺激を受け、自分から積極性に学ぶようになりました。



いま練習で強化している点は?

実業団のコーチや監督には、身体を他の選手くらい大きく、とくに脚の筋力をつけろと毎回言われています。コートに入っていない間は、ひたすら筋力トレーニングに励んでいますね。技術面では、ショットに対する返球のバリエーションを増やしたいので、ノックで鍛えています。目の前に「こういう選手になりたい」と思う選手がたくさんいるのは本当にありがたいこと。こういう環境に飛び込んでよかったと思います。



2016年の目標を教えてください。

2月に日本障がい者バドミントン選手権大会(6・7日/福岡県久留米市)が開催されます。まずはここで優勝することを目標にしています。また、今年は2年に一度のアジア選手権が11月に中国で開催される予定です。強敵の中国選手と対戦する貴重な機会になるので、頑張りたいです。



2020年東京パラリンピックに向けたビジョンを聞かせてください。

昨年の世界選手権の時のように、緊張して実力が出せないという悔しさは二度と味わいたくありません。東京では練習の成果を発揮して最高のパフォーマンスを試合で出したいと思うし、メダルを獲得したいですね。


(MA SPORTS)

プロフィール

豊田まみ子(とよだ まみこ)
1992年、福岡県生まれ。ヨネックス株式会社勤務。生まれつき左ひじから先がなく、パラバドミントンのクラスはSU5。母親の影響で小学4年からバドミントンを始め、強豪の精華女子高に進学。筑紫女学園大3年の時にパラバドミントン世界選手権(ドイツ)シングルスで優勝し、一躍注目を集める。インチョン2014アジアパラ競技大会シングルスベスト8、日本障害者バドミントン選手権大会シングルス・ダブルス優勝。2015年中国国際シングルス・混合ダブルス3位、インドネシア国際シングルス優勝・ダブルス準優勝、世界選手権(イギリス)シングルス準優勝・ダブルス3位。シングルス(SU5)世界ランキング2位。好きな言葉は「努力は才能を超える」。