パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

<<一覧に戻る

2023年3月22日

ボッチャ 内田峻介選手

初出場の世界選手権で躍動した、20歳の金メダリスト


2022ジャパンパラボッチャ競技大会で試合に臨む内田

昨年12月にブラジルで開催されたボッチャの世界選手権の個人BC4男子で優勝した内田峻介(大阪体育大)。予選では東京2020パラリンピック(以下、東京2020大会)銅メダリストの梁育栄(香港)と互角の争いを見せ、駒を進めた決勝では東京2020大会6位のエウクリデス・グリサレス(コロンビア)に7-0と、初出場ながら名だたる強敵に堂々と渡り合った。

もともとは「緊張しやすく、負けたらどうしようと悩むタイプ」と内田。大学でメンタルコントロールのアドバイスを受けてからは、結果を求める前に、プレー目標を立てる過程を意識するように心がけているという。世界選手権の準決勝では、劣勢の場面でうろたえるのではなく、あえて雄叫びをあげて気持ちを奮い立たせ、勝利を引き寄せた。追い込まれても、今の自分に何が必要かを冷静に分析する。内面の成長が、飛躍につながった。

追われる立場となった今年1月の日本選手権は、やはり緊張はしたが、「この大会は自分自身への挑戦」と切り替え、準決勝で東京2020大会日本代表の江崎駿(法政大)を、決勝で藤井金太朗(Noble Wings)を破って2連覇を達成し、王者の風格を見せた。

山口県宇部市出身。県立山口南総合支援学校中学部2年からボッチャに取り組み始め、中学3年でスポーツ庁によるアスリート発掘事業「J-STARプロジェクト」に参加。高等部1年の2018年には2度目の日本選手権で準優勝を果たした。2021年に大阪体育大教育学部に入学し、現在はパリ2024パラリンピック出場を目指してアダプテッド・スポーツ部で東京2020大会日本代表コーチの曽根裕二氏の指導を受けている。

東京2020大会は日本代表を決める選考大会で敗れ、出場は叶わなかった。その悔しさが奮起の足がかりとなり、柔軟な戦術と投球の精度を追求してきた。そんな内田を支えてくれたのが部のメンバーだ。「世界選手権の時も応援メールが力になった。日本選手権では先輩がコーチとして帯同してくれて、心強かった」。時には離れた場所で、時には隣で、ともに戦ってくれる仲間の存在が、原動力のひとつになっている。

4月にはカナダで開かれるワールドカップに日本代表として挑む。「研究はされるだろうけれど、ここでも“自分に挑戦”の気持ちを忘れずに臨みたい」と内田。勇気と覚悟を持ってコートに向かい、自身の手で新たな可能性の扉を開いていく。

(MA SPORTS)