パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2022年6月14日

パラ陸上 兎澤朋美選手

理想の跳躍を追求し、世界の頂点へ


6月の日本選手権の女子走幅跳(T63)で大会新記録をマークし、優勝した兎澤朋美

東京2020パラリンピック日本代表の兎澤朋美(富士通)が、女子走幅跳(T63)で好調を維持している。5月のジャパンパラ陸上競技大会では、4m70を跳んで自身が持つアジア記録を更新。続いて、同月末にスペインで行われた国際大会では、その記録を上回る4m79をマーク。帰国して臨んだ6月の日本選手権では、安定したパフォーマンスを発揮し、大会記録を更新する4m64(追い風参考)で優勝した。現在、課題のひとつとして取り組んでいるのが助走の軌道。各国選手の映像などを観て、自身の動きを分析しているといい、「比較すると明らかで、私は健足側が身体の後ろに流れるような走りになっている。もっと前さばきを意識して、よりスピードに乗りやすい形に持っていければ」と語り、前を見つめる。

兎澤は小学5年の時に骨肉腫を発症。左脚の太ももから下を切断して義足生活となった。中学2年で陸上を始め、高校3年の時にリオ2016パラリンピックで躍動するパラアスリートの姿を観て刺激を受け、2017年に日本体育大学に進学。陸上部で本格的な指導を受けると才能が開花し、2018年のアジアパラ競技大会(インドネシア)では100mと走幅跳でそれぞれ銅メダルを獲得。さらに、翌年の世界選手権(アラブ首長国連邦)では100mでアジア新で6位入賞、走幅跳で3位と経験と結果を重ねてきた。

現在のT63クラスの走幅跳の世界記録は、マルティナ・カイローニ(イタリア)が今年3月にマークした5m23。兎澤が4位(4m39)だった東京2020パラリンピックは、3位までが5m台を跳んでおり、兎澤も今季の目標を5mに据える。7月にはドイツに渡り、レバークーゼンで開かれる大会出場後はそのまま1カ月ほど滞在して現地のクラブチームで練習する予定だとし、「そこでもう一段、上げられれば」と強化プランを描く。

2年後のパリ2024パラリンピックに照準を合わせ、さらなる高みを目指す23歳。彼女の挑戦に注目が集まる。

(MA SPORTS)