パラスポーツ最高峰を目指す姿を追いかける最前線レポート--Next Stage--企画・取材:MA SPORTS

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2020年9月11日

陸上競技 石田駆選手

パラ陸上界の超新星「東京パラでの金メダル獲得と日本インカレ出場が目標」


男子100m(T46)で力走する石田。狙っていた10秒台には届かなかったが、大会新記録で優勝した

コロナ禍のなかで開催されたパラ陸上の日本選手権。上肢機能障がいクラス・T46の石田駆(愛知学院大)は、注目の男子100mを大会新記録の11秒25で制した。昨年の鮮烈デビューから1年、さらに進化を遂げた姿がそこにあった。

2019年、石田は6月の日本選手権で初出場ながら男子400mで優勝すると、翌月のジャパンパラ競技大会では100mと400mで日本記録を塗り替え、9月の世界選手権の出場切符を獲得。その世界選手権では並みいる強敵と競い、400mで5位入賞の好成績をおさめた。中学で陸上を始め、高校総体にも出場した石田にとって、「東京パラリンピックでの金メダル獲得と日本インカレ出場」が目下の目標だ。

18年にスポーツ推薦で愛知学院大に進学した石田。その直後に左上腕に骨肉腫が発覚し、人工骨置換処置の手術を行った。切断は免れたものの、周辺筋肉のほとんどを失った。その約半年後に練習を再開するなかで、パラ陸上にも取り組み始めた。そのわずか半年後の快進撃は、前途のとおりである。

東京パラリンピックが延期になり、ほぼ手中に収めた代表内定も先送りになった。当初は悔しさが募ったが、現在は「自己ベストを更新する猶予ができた」とポジティブに捉える。競技場が使えない間は、あえて足場の悪い場所でダッシュをするなど瞬発系の自主トレーニングを積んできた。右手のみを地面につくスタートの練習にも力を入れる。今回のレースでは出遅れたスタートを反省点に挙げており、課題の克服を誓う。

緊急事態宣言の解除後、別の大学に進学した仲間たちと一緒に走る機会があり、練習に取り組む姿勢やメンタル面で大いに刺激をもらった。「少しずつコンディションを整えて、東京パラにつなげていくつもり」と力強く話す超新星の若きスプリンターが、これからどんな走りを見せてくれるのか。さらなる活躍に期待したい。

(MA SPORTS)