第8回チャレンジカップ京都
新人選手からベテランまで、記録更新に挑んだ2日間
パラ・パワーリフティングの「第8回チャレンジカップ京都」が28日から2日間にわたり、京都府のサン・アビリティーズ城陽で行われた。高校生から60代のベテランまで36人がエントリーし、4階級で日本新記録が誕生した。また、10月の世界選手権(エジプト)の日本代表最終選考会を兼ねており、トップ選手が派遣標準記録突破に挑んだ。
男子97㎏級は階級変更の田中が圧巻のパフォーマンスを披露した
男子97㎏級を田中が制す! 日本記録を24キロ大幅更新!
大幅な日本記録更新でもっとも会場を沸かせたのが、男子97㎏級の田中翔悟(三菱重工高砂製作所)だ。3月の全日本選手権は男子88㎏級で優勝したが、今大会は1階級上げてエントリー。第1試技から日本記録を9キロ上回る180キロに挑み、スムーズに挙げたものの失敗判定。しかし、きっちりと修正して第2試技ではオール白旗で成功すると、第3試技ではそこからさらに15キロを上積みする195キロを申告。家族と仲間たちが固唾をのんで見守るなか、田中は集中力を高めて見事に持ち上げ、世界選手権の派遣標準記録を突破した。
まだ体重増加が十分ではないことから、世界選手権はすでに派遣標準記録をクリアしている男子88㎏級での出場を考えているという田中。同階級の日本記録は2021年に大堂秀樹(SMBC日興証券)が198キロという大記録を打ち立てており、「エジプトでは大堂さんの記録を抜きに行く」と、力強く語った。
男子80㎏級は、競技歴4年目の日野雄貴(シンプレクス・ホールディングス)が自己ベストとなる175キロで優勝を果たした。「世界で戦えることをアピールしたい」と、第3試技で世界選手権の派遣標準記録となる178キロに挑戦。惜しくも失敗となったが、最後まで挙げ切る力強い試技で、「パワーがあることは証明できたと思う」と、振り返った。大会終了後に開かれた世界選手権の代表選手選考委員会の結果、日野は委員会推薦で選考された。同階級ですでに参加標準記録を突破している大堂とともに、世界に挑む。
高校生リフターが日本新! 競技転向の宮本も好パフォーマンス
最年少出場者となった飯沼は自己ベストを11キロ更新
今後の成長が期待される次世代の選手や、競技歴が浅い選手も強化の成果を発揮した。15~17歳の部(ルーキー)の男子49㎏級に出場した最年少・17歳の飯沼世成は、第1試技で75キロをクリアすると、続けて80キロ、82キロもオール白旗のパーフェクトな試技を披露。自己ベストを一気に11キロ更新し、さらにはルーキーの日本記録も塗り替え、敢闘賞を受賞した。昨年度の記録は71キロ。「コーチの指導のもと、筋力をつけて、左右のバランスを意識した練習に取り組んできた。その成果かなと思う」と、急成長の1年間を笑顔で振り返った。
また、高校3年の小針雄介も、18歳~20歳の部(ネクストジェネレーション)の男子72㎏級で自己ベストを10キロ上回る90キロに成功。日本記録も更新した。車いすバスケットボールに取り組んでいた高校1年の時に、他のスポーツも体験してみたいと選手発掘イベントに参加した際に関係者に声をかけられ、競技をスタート。取り組むほどに記録が伸びる達成感に惹かれ、現在はパワーリフティングに専念しているという。前述の飯沼は1学年下の同世代。「階級は違うけれど、負けられないと思っている。切磋琢磨できるいい環境」と語り、視線を前に向けていた。
日本記録保持者である樋口健太郎が不参加だった男子72㎏級は、フレッシュな顔ぶれとなった。昨年のチャレンジカップがデビュー戦だった宮本リオンは、105キロの自己ベストをマークして優勝した。宮本はアーチェリーで東京2020パラリンピックに出場したパラリンピアン。1983年生まれで、「年齢的にも、最後に何か新しいことに挑戦したかった」と、パラ・パワーリフティングに競技転向した。バーベルを胸まで降ろして持ち上げる“3秒間”のために長い月日をかけて準備をする奥深さが「楽しい」と宮本。次の目標は全日本選手権に出場することだといい、「もっと上を目指していきたい」と、言葉に力を込めた。
女子55㎏級は中村が日本記録を1キロ更新!
女子55㎏級で自身が3月に打ち立てた日本記録を塗り替えた中村
女子55㎏級でも日本新記録が誕生した。中村光(日本BS放送)は第1試技の68キロが“止め”で沈んでしまったと判定されて失敗となったが、第2試技で同重量をパーフェクトで挙げると、第3試技で73キロに成功。3月の全日本選手権で自身がマークした記録を1キロ上回った。さらなる記録更新を狙った75キロの特別試技は失敗に終わったが、「第1試技の失敗のあと、コーチと改めて流れの確認をしたことで落ち着いて挑めた。日本記録が出せてよかった」と、安どの表情を見せていた。
また、すでに世界選手権の派遣標準記録を突破している女子61㎏級の桐生寛子は、73キロを挙げて優勝した。非公認ながら80キロが自己ベストの桐生。この記録を公式戦で出すことを目標に掲げていたが届かず、「胸まで下げる時に力がすっと抜ける感覚があった。理由を分析して、課題を克服したい」と、世界選手権でのリベンジを誓っていた。
女子41㎏級の成毛美和(APRESIA Systems)は63キロに留まり、世界選手権派遣標準記録の突破はならず、悔し涙を浮かべていた。J-STARプロジェクト5期生の女子50㎏級の柳原愛(アイ工務店)は、日本記録まであと1キロに迫る58キロをマークした。
(MA SPORTS)
